着物を左前に着ると
死人という意味になる。
というのはなんとなく
聞いたことありますよね?
親しい方が亡くなった経験がある方は
左前になっている死装束を
見たことがあるかと思います。
年に一度花火大会に行く時くらいしか
着ないという方でも知っていて
左前の写真がUPされると
SNSが大炎上するこの左前という着方
なぜ右前がよくて左前が
ダメなのでしょうか?
そして結局
どっちを上にすればいいのでしょうか?
この記事では
左前が死人の着方、死装束となった由来と
いざ着物を着付けるときに
ド忘れしない方法について見ていきます。
着物や着方には法律があった?!左前とは何ですか?
死装束が左前なら
俗世にいる私たちの着方は
”右前”になります。
右前が正しい着方と決められたのは
1300年以上前の奈良時代のことです。
719年に
”右衽着装法
(うじんちゃくそうほう)”
という法律が定められました。
もちろん現代では
すでにない法律ではありますが
この時初めて
”着物の襟は右前に合わせる”
ということが法律で明文化されたのです。
日本の文化の多くは中国に由来しています。
中国ではその昔
”位の高い人は左前、庶民は右前”
とされてため日本でもこれが
採用されました。
そうして庶民の服装が定められた中で
なぜ死装束が左前になったのでしょうか?
明確な理由は定かではありませんが
主に2つの理由が挙げられています。
ひとつは
”亡くなった人は仏様になるから”です。
日本で主に信仰されてきた仏教では
人は死ぬと仏様になると言われています。
四十九日を過ぎてからお香典を供える時には
「御仏前」仏様と書きますよね。
俗世では庶民であっても
あの世に行けばみんな
位が上がるという理由から
位の高い人の着方である左前に
着させるようになったと言われています。
ふたつ目は
”葬儀は逆さ事が習わしだから”です。
逆さ事とは俗世での習慣と
逆のことを言います。
亡くなった方の行く”あの世”は
この世と真逆の位置にあると
考えられていました。
これから
その世界にいく故人への配慮として
様々なことを逆に行う風習があるのです。
死装束が俗世と逆の
左前になるのもそのためです。
他にも
枕元の屏風を逆さまにして立てる
”逆さ屏風”や
体を清める湯灌に使うお湯を
水に熱湯を足していくという方法で行う
”逆さ水”などがあります。
これらの風習は地域によって異なりますが
毎日目にする着物の合わせ方は
特に注意を受けやすいものです。
こうして
”左前は死人の着方”という常識が
出来上がっていきました。
死生観はだんだんと変化してきています。
お墓を持たない、死んだら風になりたい、
海に散骨してほしいなど
様々な弔い方があり
それが受け入れられています。
棺に収める時も
生前気に入っていた服を着せるなど
風習に囚われない葬儀が
増えているのは事実です。
ですがこのように
長い年月をかけて出来上がった
”常識”はまだまだ続きそうです。
見た人をびっくりさせないように
左前には気をつけていきたいですね。
いざ着物を着ようとしたらド忘れ…左前、右前を冷静に思い出す方法。
偉そうに言っても
私も着物なんて子供の頃
七五三で着たのが最後です。
着物も若かりし頃に
花火大会で着たくらいで
全く慣れていません。
「結局どっちなんだっけ?」は
毎回のお約束です。
そんな時に思い出してほしい
おすすめの右前の覚え方を紹介しますね。
1.まず”前”って何?を
思い出す
着物の襟は”右前”という言葉が
覚えられたら
何を持って”前”と呼ぶのかを
思い出してみてください。
右前とは
右を先に、左を後に重ね合わせる
という順番を意味する言葉なのです。
重なった後のことを考えると
「相手から見て前?自分から見て前?」と
混乱してしまいますが
着た後のことではなく
着る最中の順番と考えると
簡単に納得できるかと思います。
2.相手から見て小文字のy
お友達と一緒におうちで着付けてから
出発する場合は
お互いにチェックできますよね。
向かい合った時に
襟のラインが小文字のyに見えることを
お互いに確認してみてください。
ひとりで鏡で見るときが
反転して逆になってしまうので
注意してくださいね。
3.右手でものを
出し入れしやすい
私はこれが1番わかりやすいです。
着物の時って
ハンカチや大事なものを懐に入れますよね。
懐は襟が合わさった胸元の
隙間のことを言います。
そして
子供の頃に矯正されていなかったとしても
日本人の90%が右利きです。
右前に合わせると開いている懐は
右側にあります。
右利きの人は出し入れしやすいですね。
着物は生地も薄いですし
懐にものを入れるということは
あまりないかもしれませんが
着付けた後に一度手を入れて
チェックしてみるといいかもしれませんね。
最低限右前を覚えたら自由に楽しんで。
日本の伝統文化である着物や着物
着物警察なんて言われる人が出てくるほど
気になる人には気になる作法が
たくさんありますが
基本的には自由に着ていいのです。
今や着物や着物は
おしゃれアイテムのひとつ
洋服と違って大胆な柄に
チャレンジできるのも魅力です。
そもそも
洋服がない時代には着物が普段着でした。
作業着であり寝巻きであったのですから
今の着物の”作法”と呼ばれているものより
相当着崩れた格好であったはずです。
でも
そんな中でも
気をつけなければいけないのが
”右前”にすることです。
なんの心配もなく
堂々と着て出かけられるように
自分の覚えやすいやり方で
思い出してくださいね。